ご指導している方から、作家の村上春樹氏の「走ることについて語るときに僕の語ること(2007文藝春秋)」というエッセイ本をいただきました。
村上氏は、世界的な小説家ではありますが、80年代から国内外のマラソンレースを経験したベテランランナーの顔をお持ちです。
この著書では、走ることへの想いや走り始めた経緯、国内外の参加したレースでの出来事などが綴られています。
その中で共感できる箇所がありましたので、皆さんにご紹介したいと思います。
「走っているときにどんなことを考えるのかと、しばしば質問される。
・・・・確かに寒い日には、ある程度寒さについて考える。暑い日には、ある程度暑さについて考える。悲しいときには、ある程度悲しさについて考える。楽しいときには、ある程度楽しさについて考える。前にも書いたように、昔起こった出来事を脈絡なく思い出すこともある。ときどき(そういうことはほんのたまにしか起こらないのだが)、小説のちょっとしたアイデアが頭にふと浮かぶこともある。でもそれにもかかわらず、実際にはまともなことはほとんど何も考えていない。
僕は走りながら、ただ走っている。僕は原則的には空白の中を走っている。逆の言い方をすれば、空白を獲得するために走っている、ということかもしれない。そのような空白の中にも、その時々の考えが自然に潜り込んでくる。
・・・・走っているときに頭に浮かぶ考えは、空の雲に似ている。いろんなかたちの、いろんな大きさの雲。それらはやってきて、過ぎ去っていく。でも空はあくまで空のままだ。雲はただの過客(ゲスト)に過ぎない。それは通り過ぎて消えていくものだ。そして空だけが残る。空とは、存在すると同時に存在しないものだ。実体であると同時に実体ではないものだ。僕らはそのような茫漠とした容物の存在する様子を、ただあるがままに受け入れ、呑み込んでいくしかない。」
漠然と感じていたことが活字として表現されていることが新鮮でもあり、驚きでもありました。
また、同じ想いを共有していることを知ることで、村上氏が身近に感じられるようになりました。
このように走るということを通して、多くの人と想いを共有しつながっていけることも走ることの素晴らしさの一つのように感じます。
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いとう (金曜日, 15 2月 2013 23:53)
自分自身で日々、感じていた感覚が具体化されたことで「自分は、日々感じている感覚とは、こう言う事だったんだ!」
嬉しい発見が出来ました!( ´ ▽ ` )ノ
管理人 (日曜日, 17 2月 2013 01:40)
ありがとうございます。
体験しないとわからないものの一つで、頭で理解できるものではありませんね。そして、そこに共有する何かが生まれるように思います。